2010-01-29 Fri  [ 旅・取材・人 ]

定期診断で人と獣害を思う

by gaku


諏訪中央病院の名誉院長の鎌田實さんは、いまや超有名人。
診察に、著作に、講演に、そして世界各地での医療ボランティアに、超多忙だ。
鎌田實さんは、若い青年医師時代から強力なリーダーシップを発揮して病院運営をやってきたから、諏訪中央病院は名実共にすばらしい病院になっている。

そんな鎌田さんに、オイラのカラダを預けて12年。
親友である画家の原田泰治さんと共に、
「gakuさんなぁー 俺がカラダを背負うから…」
そう言ってくれて、以来ずっとオイラたちのカラダの面倒をみてくれている。
2~3ヶ月に一度は血液検査をして、体内チェック。
前回は酒の飲みすぎを指摘されたが、今回の検査では正常値。
とりあえず、オイラの口の悪さ意外はすべて正常だった。

こうした定期健診のたびにオイラは諏訪中央病院まで出かけているのだが、忙しいときは高速道路で時間短縮をしている。
そして、たまに時間ができると、伊那市の高遠町から杖突峠をのんびりと越えて行くことにしている。
今回は、たまには杖突峠を越えてみてもいいかなと思い、往復同じコースをたどって出かけてきた。

杖突峠は国道152号線ながら、周辺の集落は急激な過疎化に見舞われている。
道路を走っていても、立派な住宅が4~5軒も連続的に空家になっているのがよくわかる。
そのくらい、高齢化と過疎化が進んでいるから、これも社会ウオッチングとしてオイラの欠かせないテーマでもあるところ。
この地域は戦国時代には武田信玄の領地でもあり高遠城下町として昔は栄えていたであろうところが、いまではほんとうに人口減にあえいでいるといった感じで元気がない。
まさに、「…兵どもが夢のあと」、といったカンジなのである。



こんなところだからすでに、人間より野生動物のほうが勢いが増している。
集落全体に加齢臭が満ちれば、それを敏感に感じとるのが野生の力であり、地域住民の覇気のなさを読んで動物たちが強くなるのは当然だ。
まるで集落全体を大きくすっぽりと囲むように獣害フェンスが張り巡らされてはいるが、シカたちはそれを難なく突破して人家脇までやってきて作物を奪っていくからである。
こうした土地を、人間はやがて野生動物たちに明け渡すのも時間の問題であろう。

そう思いながら、ボクは車を運転しながら、そこに暮らす人々の心理をまさぐるのであった。
そして思うことは、ここには、地域を見張り引っ張っていくリーダーがすでにいなくなってしまっていると感じた。
野生動物の獣害対策には斬新で強力なリーダーシップのもとでの網掛けがなされないと失敗に終わる。
そのことにこの地域は気づいてないから、動物たちにナメられてしまっているのだ。
強力なリーダーが出てこないかぎり、もう手遅れだと思った。
いまや、そのくらい野生動物が強くなっている地域もあるのだから、これは全国的に意識も新たに、現代人は対策を考えていかなければならないところにきているからである。



そんなことを感じた今回の定期健診だった。

写真:
1、2)企業看板の廃物利用で獣害フェンスを作ってあった民家。それほど獣害は深刻なのだが、看板を使われたほうはい迷惑だと思う。関係企業の人間もここをそれほど通らないから、気づかないのかもしれない。
3)杖突峠を越えて茅野市側に下ればもうそこは20万人近い地方都市。そのすぐ脇までも獣害が深刻化しているから防波堤となる農家も必死の様子でマネキンの「かしら」まで動員していた。



2010-01-26 Tue  [ 哺乳類・野生動物 ]

死ねば人間だって動物に食われる…

by gaku


冬山から下山してきた知り合いの山男から電話があった。

「gakuさんよう、大ニュースだぞ!
 中央アルプスの稜線に冬でもキツネが棲んでいることがわかった、ぞ
 山小屋に居てなぁー 10mほどまで近づいてきた姿をみると、間違いなくキツネだった
 標高2800mの寒風吹きすさぶ稜線だ、ぜ
 何を餌にして生きているのだろう…か?
 餌なんて、あるのかなぁー …」

夏のシーズンには、中央アルプスのハイマツ帯の尾根にもキツネがいることは知っていた。
冬は、ノネズミはみんな雪の下で生活しているから、キツネは食べるものがなくて生きてはいられないので、下界に降りてくるものとボクは信じていた。
しかし、このニュースはこれまでの認識を変えてくれたから、確かに「大ニュース」だと思う。

そういえば、3年ほど前の厳冬期に稜線で遭難者の遺体が見つかった。
遭難して5日ほどしか経ってなかったが、発見時には雪の上に出ていた手と顔が何者かに食べられて無くなっていた…
そんな話題が、実際に捜索にあたった救助隊員から伝えられたものだった。

このときボクは、オコジョだって冬になれば山麓まで降りてくるのだから、あんな稜線にキツネは絶対に棲めないと思っていた。
だから、遺体を食べたのは、翼のあるイヌワシかクマタカの仕業しか考えられなかった。
しかし、今回のキツネ目撃談を知ると、遭難者を「食べた」のはキツネの可能性がでてきた。
いや、まちがいないだろう…



人間だからといって、魂のなくなった物体は肉食性の野生動物には単なる「餌」でしかない。
人間社会でどんなに地位のあった人でも、肉食動物たちからみれば、それがご馳走か否かの判断しか下さないからだ。
それが自然界に生きる生物の役目であって、こういう世界のあることも現代人は記憶の隅に留めておいたほうがいいだろう。
こういう世界のあることを知らないより知っていたほうが、自然界を的確に見つめることができるから、である。

写真:
1)中央アルプスの稜線は寒風と雪が深く、そして急峻だが、そこにキツネが厳冬期でも生息していることが分かった。
2)雪の夜を徘徊するキツネだが、肉食性の彼らは生物の死体処理も担うスカベンジャーなのだ。



2010-01-21 Thu  [ 哺乳類・野生動物 ]

獣害を考える 7 ニホンジカは臆病…

by gaku


この写真は、南アルプス山中に露出した泥土をニホンジカがなめにきているところ。
ミネラル分が多く含まれるこの泥土をニホンジカたちが生きるために必要としているから、ずっと昔から、ここに集まってくるのだった。
手前のシカは、泥土をなめようとしているところ。
一緒にやってきた後方のシカは、何かに警戒していままさに方向転換をして逃げようとしているところ。
逃げるこのメスジカの耳は、カメラ方向の音をとらえている。
手前の安心しているシカも、耳は後方のシカのただならぬ動きをいまとらえようとしているところである。
この瞬間のあと、0.2秒後には、2頭ともに走り去っていくことが、ボクにはこの写真から読み取ることができる。



左上のシカは、耳の角度と顔の方向から上方を警戒している。
右上のシカは、自分が歩いてきた後方に耳目を立ててさかんに警戒している。
左下のシカは、まさに逃げる瞬間であるが、その耳はカメラ方向にただならぬ不安を感じたからその耳がまだ警戒点を探っている。
右下のシカは、左右の音を探りながら、鼻をつかって前方からの情報も得ている。



左上のシカは、後方の個体は上部を警戒しながら耳はカメラ側を探っている。そして、手前のシカは目で前方を警戒しながら左耳は前、右耳は右側面上方からの音の情報を得ている。
右上の若いオスジカは、耳は左右の音の情報を探り、目は前方を確認している。
左下のシカは、まさに逃げようとしている瞬間だが、後方のシカもこのあとすぐに巻き込んで、遁走したにちがいない。
右下のシカも、後方の音を聞きながら体はすでに逃げている。

このように、無人撮影カメラで捉えたニホンジカの一瞬の姿を分析するだけでも、シカはいかに耳を最大限に使いながら、目と鼻をもくわえて、全身をセンサーにして警戒しながらきわめてデリケートに行動していることがよくわかる。
したがって、超音波までかなりの部分を聞き分け、情報源として日々行動をしている野生ニホンジカの生態がこれでよくわかるというものだ。
しかし、これほどデリケートに行動しながら、ときには大胆にしつこく農作物を荒らしていくニホンジカだからしたたかといえばいえる動物でもある。
で、こんなシカに多くの人々が手を焼いているのだから、ここは獣害としても私たち現代人は真剣に考えなければならないことだろう。



こうして、シカの生態を1年半に渡って無人撮影カメラがずっと捕らえているのだが、シカが写らない写真のコマ間に対策のヒントが相当に隠されているとボクは考えている。
ここに示した写真は、カメラのメンテナンスにボクが行ったときのカットだが、ほぼ1ヶ月間隔で出かけていることが記されている日付でもわかるだろう。
撮影システムそのものがそのくらい優秀であることは、このような撮影に興味のある方ならすでにお分かりだと思う。
が、このカットの中には、シカたちがまったく撮影されなかった時期もあるのである。
シカの姿が写るカットにも期待するのだが、むしろ写されなかった空白の時間のほうが、獣害対策をするのには大きなキーポイントがあると思っている。

「何故カメラの前にシカたちは来なかったのだろう…」、その理由を分析すればいいからである。
ニホンジカはそのくらい、デリケートな動物なのであって、そのデリケートさを逆手にとれば「追い払い」も可能なのである。
しかし、大量捕獲をするとなれば、このデリケートさが邪魔になるから、別の発想での研究が必要であろう。
まさに、「諸刃の剣」のような動物であり、獣害対策コンサルタントをするにはほんとうにオモシロイ日本の野生動物なのではないかといえる。



2010-01-18 Mon  [ 環境・ゴミ・現代社会 ]

獣害対策コンサルタント宣言

by gaku


野生動物たちによる「獣害」は、いまや全国的に社会問題化してきている。
この裏には、現代人たちの自然に対する「忘れ物」が大きく関わってきていることなので、いろんな問題を丁寧に解決していくしかない。
このため、多くの人たちが獣害には悩んでいるのだが、きちんとした対策が取られていないのが現状だ。

そこで、ボクも獣害対策を考えてみることにした。
ボクは、野生動物の姿そのものを撮影するのが本職だが、これには大変な技術が要るのである。
とにかく野生動物は、「何月何日にどこそこで撮影があるから来てください」なんていう約束事ができない相手だから、その約束をいかにとりつけ、効率よく撮影を行うかがすなわち「技術」だからである。
これでメシを食ってきているのだから、そこはやはり野生動物と話しができなければ仕事にはならないからだ。
このため、カメラの目前までいかに野生動物が出現してきてくれるかといった技術開発腐心には、たいへんな年季がはいっている。



なので、こうした撮影技術を「表」とするならば、カメラの前に動物たちを来させないようにすることも「裏」の技術としてできるのではないかと思った。
これまで培ってきた野生動物をいかに騙して安心させ瞬時に撮影してしまうかといった技術の逆をやればいい、ことである。
まあ、こういったことはカンタンに口には出せるが、動物の習性を知っていると、追いやる方法というのは撮影よりも実際には難しいのではないか、と思う。



このため、撮影のために数々のアイデアや電子パーツなどをこれまでボクは開発してきたから、それらを応用して「無人獣害対策ロボット」をつくりはじめた。
いや、これは、全国から撮影よりも多くの相談が寄せられるようになったので、講演や現場コンサルタントとしての理論武装と方法論を確立しておかなければならない、と感じたからだ。
そのためには実践をしておかなければならないと思い、ハイテクとローテクのアイデアの限りをつくしているのである。

その第一歩として、南アルプスにニホンジカが毎日必ずミネラル分補給にやってくる場所があるので、一年間を通して、ここに来させないようにすることが課題である。
すでに一年半にわたって、無人撮影カメラで撮影しながら、ここにやってくるシカたちの行動パターンは掴んである。
なのであとは、どう「追い払う」かの立証だけである。
そのときには、「獣害対策コンサルタント」として、きちんと発言ができるようになっていると思う。



写真上から:
1)深夜、行列をつくってミネラル分補給にきているニホンジカ。
2)シカの習性を利用して、ローテクといわれるが鳴子もつくってみた。
3)電子パーツによるハイテク装置の製作にも余念がない。
4)防犯ブザーも音が大きくていいのだが、不良品がかなりあるのには驚いた。


2010-01-15 Fri  [ 旅・取材・人 ]

寒波襲来

by gaku


注文してあった2テラのハードデスクが届いた。
さっそくPCに取り付けたが、元箱が「冷やし系」なのには笑ってしまった。
ファンを回して強制的に、HDDを冷やすものらしい。
皮肉にも、このHDDが届いてから「寒波」がやってきた。
その、寒いこと、さむいこと。
仕事場の部屋にあるコップの水が、ガチンゴチンに凍ってしまっている。

こんな日は、温泉に入るにかぎる。
なので、近所のホテルの温泉にしっかりつかってきた。
この温泉は500円払えば、24時間いつでも入れるので、ほんとうにありがたい。



で、雪の中の仕事場に帰ってきて原稿を書いていたら知人から電話。

「gakuさんやぁー ○○電気の前の道にタカが死んでいるんだけど、何ちゅうタカずらやぁー?」

「いいかい、ハトの大きさを基準にして答えてくれるかい。ハトより大きいか、小さいか?」

「ハトと同じくらいだぁー」

「たぶん、それならハイタカかツミの可能性があるけれど、どうする拾ってくるかい…?」

「おお、じゃあ、届けるわい」

まもなくして、そのタカがやってきた。
ひと目みるなり、ツミのメスだった。
昨年生まれの若い個体だった。
以前、ボクのニワトリ小屋に飛び込んだものと、ほぼ同じだった。
しかし、直線で30kmも離れているから、距離的には別個体だろう。

ツミは、右の眼球がすっかり飛び出していて、腸も出ていた。
右足付け根も折れていて、肉も飛び出していたから、この寒波でお腹をすかし、獲物に見境なく突っ込んでいったその先に電線でもあったのだろう。
こういう事故は猛禽類にはかなり多いので、寒中のこの時期は、彼らにとってもたいへんな試練の季節なのである。
それにしても、貴重な生命がもったいなかった。



まあ、こうして生命を落とすことも自然界の営みの一つなのだから、このまま野外に放置すれば、他の野生の誰かの餌になることだろう。
厳冬のこの時期に、ツミの死体が食べられることで、支えられる野生の「生命」もあるのだから、そうするのがいちばんいい。
「死は次なる生命を支える」、これはボクの持論である。

写真:
1)冷やし系のHDD。これが届いてから寒波がやってきた。
2)寒い日は、温泉がやっぱりイチバン。
3)生命を落としたツミ。目と腸が飛び出し、足も折れて、即死状態だった。



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