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『眠らない都市とゴイサギ』

ゴイサギという夜行性のサギがいる。
カラスより若干大きめなこのサギは、別名を「夜ガラス」とも呼ばれている。
夜間行動中に、『カー』とか『ゴワー』と、
カラスに似た声でよく啼くからだ。このゴイサギが、
近年になって都市にどんどん進出して増加してきている。
人間社会の近代化にともない、
ゴイサギたちもライフスタイルを変えて「都市鳥」となってきた。

■高貴なゴイサギ=五位鷺
 ゴイサギを漢字で表せば、「五位鷺」となる。
 これは「平家物語」による『醍醐天皇から「五位」の位をもらったサギ』ということから、こう呼ばれるようになった。だからといって、ゴイサギが高貴かといえば、そうでもない。どこにでもいる、普通の野鳥だ。
 平家物語の時代に、ゴイサギはどのような数で生息していたのかは定かではない。しかし、あの時代の京の都にちゃんと生息していたのだから、こうして記録に残っているのだ。
 そのゴイサギが、近年は全国的に増えてきている。
 とにかく、全国の水辺環境のいたるところに、ゴイサギの姿が目撃できるからだ。そして、東京都内のような超人口密集地の水辺にまで、ゴイサギはどんどん進出しはじめてきている。
 ネオン輝く都心の水辺で、ゴイサギは忍者のように小魚などの獲物を狙っている。その姿は、まさに隠遁術。水辺で身動きひとつせずに、石のようにただジイーとしている。そこに、獲物が近づけば、ゴイサギはすばやく首だけを動かして嘴で捕らえてしまうのだ。こんなひっそりとした動作なので、人々はゴイサギの姿にはほとんど気づかないのである。

時代がゴイサギに味方した
 ゴイサギが夜行性といっても、昼間でも行動する。夜間のほうが本領発揮できるのだろうが、日中だってちゃんと動けるのである。
 このように、昼夜兼業できる野鳥は、薄暮系に強いところがある。それは、漆黒の闇よりも、わずかに明かりのある環境のほうが行動的なのだ。
 そうした「薄暮」ともいえるキーワードが、夜間照明といっていい。
 私たち人間は住みやすい居住空間を求めて、これまでに、街をつくり人工照明を増やして、夜を明るくしてきた。高度経済成長のもと「24時間眠らない都市」までつくりあげてきた。
 こうした時代背景を得て地方都市にいたるまで、人間の住空間はますますモダン化し、公園や河川もコンクリートで近代的に整備されてきた。そして、そこの脇にはタイムスイッチで点灯する「照明」も同時セットされていく。
 コンクリートの池や河川は、一見きれいに映るが、水の浄化能力を著しく奪ってしまう。しかし、こうした水環境でも、コイやフナなどの汚れに強い魚たちは棲める。むしろ、こうした環境を歓迎している向きすらもある。清流で酸素をより必要とする動きの激しいハヤなどの魚たちは棲めなくなった代わりに、ドブ川のような水には、鈍くさい魚たちには有利にはたらく。それをゴイサギが放ってはおかない。夜間の人工照明の助けもあり、ゴイサギにはそこが素晴らしいレストランなのだろう。

■新世代の生命ばかり
 人間の暮らす街の中には、さまざまな騒音もある。車や電車や飛行機をはじめ、電子音や機械音など、とにかく現代社会はにぎやかだ。
 しかし、都市空間に進出してくるゴイサギたちは、そんな騒音も気にしない。いや、気にするどころか、それが当たり前として受け入れている。
 彼らの寿命は数年のことだから、都市に増え続けるそれらの生命はみんな「新世代」といっていい。音や光などは、卵や雛のころから子守歌のように聞いたり見たりして育ってきた生命ばかりなのだ。だから、私たち人間が彼らのことを心配するのはいらぬお世話。
 私たち人間は、都市化によって野生動物たちを追いつめていると考えがちだが、それは人間だけのモノサシで自然を見ていることになる。小型野生動物は、驚くほどの世代交代スピードで生命の時間が流れている。だから、環境に適応力の強い生物は、逆に都市化を喜び「したたか」に適応して生きていけるものもでてくるのだ。

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1
夜間操業する工場近くで抱卵するゴイサギ。
2
工場からの騒音や明かりや車を、このヒナたちは見て聞いて成長していく。
3
夜の都心の遊園地池にも、ゴイサギが密やかにそしてたくましく生きている。
4
夜間にこうして飛翔しても、人間の目にはなかなかとまらない。
5
雨の中、休むゴイサギ。
6
ロープのような人工物でも、ゴイサギは生活道具に利用してしまう。
7
昼間は、こうして水辺近くでまどろんでいることが多い。
 

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