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『大都会に潜むネズミたち』

大都会から地方都市まで、現代社会の今日は、
どこへいっても人口密集地ができている。
それは、人間中心に都市開発を進めてきた結果だが、
こうした都市空間にはイエネズミという小さな巨人たちが「寄生」している。
彼らは、私たちのまわりでしたたかに繁栄して
共存をはかっているのだからすごい。

■ヒトの近くに生きるネズミ
 私たちのまわにには、「ドブネズミ」と「クマネズミ」という二種類のネズミがいる。どちらも、人間社会に寄生して生きている。
 ドブネズミはおもに地面を中心に面活動をし、クマネズミは壁や柱などを登ることを得意として垂直活動をしている。
 どちらのネズミも、その昔は日本にはいなかった。それが、江戸時代にはドブネズミが、弥生時代あたりにはすでにクマネズミが、いたのではないかといわれている。稲作と大航海時代に、彼らはどうやら日本にやってきて定着してしまったのだ。
 そして、人間の近所に生きていれば「食いっぱぐれ」ることはないと信じて、今日までパラサイターとなってきているのである。
 一口にネズミといっても、この両者を瞬時に区別することは難しい。

■スーパーマウス誕生
 東京都内のあるビルには、「スーパーマウス」と呼ばれるネズミがいる。
 スーパーマウスとは、「毒エサ」を食べても平気なネズミのことだ。とにかく、毒エサをモノともせずに生き続ける恐るべき体質をしたネズミたちなのである。
 あるビルの地下2階の食品売場から、地上8階の飲食店街までのすべてに棲む数百匹のクマネズミは、なんとみんなスーパーマウスなのだ。
 今から20数年前に、東京公害研究所でネズミに毒エサを与えた実験がある。
 奄美大島からサンプルとして集めた20匹のドブネズミ。
 これに対して、東京都内で捕まえた20匹のドブネズミ。
 この二つのグループに、同じ「毒エサ」を与えた。
 すると、奄美大島のドブネズミは、わずか1週間で全部が死滅した。ところが、都内のドブネズミは、2ヶ月たっても一匹も死ななかったのである。
 それがさらに進化して、今日のスーパーマウスは、毒エサと水だけで、一年でも、二年でも平気で生き抜けるのだ。
 生まれて2ヶ月で子どもを産み、性周期4日、妊娠期間が20日とくれば。ネズミたちはたった一年で、数世代も交代することができる。ネズミの一年間を人間にたとえるならば、江戸時代から現代までを一気に一年で世代交代をしてしまっているようなことになる。
 20年もたてば、毒に対する抵抗力を身につけたスーパーマウスが誕生してきても、それはなんら不思議ではないのだ。これほどしたたかに体質改善をしてきたネズミが誕生し
てきた背景には、ネズミたちをなんとか退治しようとする人間の、長い時間をかけた「毒」による攻防戦の歴史がある。

■大都会では種の交代がおきている
 ドブネズミとクマネズミは、私たち人間の食料に依存して生きている。それは、加工前の原料段階から、加工後のもの、さらに残飯にいたるまで、彼らはなんでもエサとしてしまう。だから、人間がいるかぎりどこにでも出現が可能なのである。
 それが、都市の土地の値段があがったことにより大都市で高層ビル化が進むと、この両者に占有地の変化が起きてきているのだから面白い。
 都市から地面が奪われてコンクリート化すれば、ドブネズミが大打撃を受けて、激減してしまった。これに対して、近代ビルを歓迎してクマネズミが激増してきているからだ。
 クマネズミは、水道管や電線などを身軽によじ登って、ビルの上層部へ棲みつくことはたやすい。ドブネズミのできない垂直空間を、いまや我が物顔で完全制圧しているのである。動物駆除会社の専門現場からは、30階、60階といわれる超高層近代ビルの最上階にまで、クマネズミが出現してきているという。
 このようなビルの最上階には、軽食喫茶から展望レストランなどもある。本来は人間だけを対象として、食料を最上階まで持ち込んでいるつもりなのだが、クマネズミにとってもそれは、絶好な「レストラン」になっているのだ。
 人間は自分たちの生活だけしか考えないが、そうした都市空間の狭間を虎視眈々と観察しながら、したたかに生きているネズミはスゴイと思う。

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1
歩道脇の植え込みからでてきたドブネズミ。


2
飲食店から出された「生ゴミ」袋に穴をあけてたべるドブネズミ。

3
深夜の歩道を徘徊するドブネズミ。

4
都内で捕獲されたスーパーネズミ(クマネズミ)、ピンク色した手前の毒エサで飼育実験中。

5
水道管を垂直に登るクマネズミ。

6
電線を伝わって隣家まで移動するクマネズミ。

7
近代的な高層ビル群にも、ネズミたちはしたたかに生きている。


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