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『快進撃中のカワウ』

いま、カワウの動きから目が離せない。
全国各地で、その数を増やして、
傍若無人ぶりを発揮しはじめてきているからだ。
ではいったいカワウは、
今日どうしてこのように、激増してきたのだろうか。


■水中ダイビングの魚捕り名人
  「魚食」専門のカワウ。水中で魚を追いつめるその潜水能力は大したもので、魚たちには恐れられている。
  「鵜飼」で有名なウは、「ウミウ」。ウミウは、カワウより体が若干大きい。ウミウは名前が示すとおり生活の場を海にもっている。波の荒い外洋にまで魚を追う。これに対してカワウは、川や湖沼、内湾などが、主なすみかだ。
  どちらも、生きた魚を水中に潜っていって捕まえるという似た習性をもっているが、海と川をうまく使い分けているのが両者なのである。
  それなのに、カワウだけが今日では異常なくらいに増えつづけている。
  これまでの生息地だった沿岸付近から、長野県や山梨県などの海のない内陸の山岳圏にまで、その分布を広げてきたのは特筆に値する。

■河川の汚れを喜ぶ生き物たち
  今日の日本社会は、どの家庭でも全国的に一緒の生活水準になった。食膳には食べ物があふれ、風呂にもほぼ毎日のように入浴する。その食事の準備から食後の洗い物、入浴、洗濯などの汚水は、ほとんどが家庭雑排水となって全国の河川へと流入する。
  一軒の家庭から出る排水は、それは大したことではないように思われる。しかし、これが全国各地で毎日恒常的に行われていけば、河川の水は急速に「富栄養化」が進む。下水処理がまだまだ完璧でない国内の事情をみれば、ここ30年ほどの間に、国中の河川の水の汚染は急速に進んできていると考えていいだろう。コンクリートを多用化した河川工事も、河川の自然浄化能力を著しく落としている。
  こうした水環境の変化をうけて、富栄養化に強いコイやフナ、ウグイなどの魚が勢力を伸ばし、加えて、テラピアやブラックバスなどの外来魚までも増えてきた。そうなれば、それらをどん欲に食べるカワウが増えてくるのである。
  餌があれば、それを捕食するのに適した生物が増加するのが、生物界の原則だからである。

■都市から内陸まで
  こうしてカワウは、都市部から近年では長野県などの山岳圏までその姿を見られるようになってきた。
  長野県でカワウが見られるようになってきたのは、ここわずか5〜6年のことである。50〜100羽くらいのカワウの群れが、ゲリラ的に飛来して、天竜川や諏訪湖などに散発的にやってきていた。それが、やがては住み着くようになり、カワウが水辺に憩うのが今日ではごく当たり前の風景になった。
  滋賀県の琵琶湖では、シラサギたちの巣づくり場所をカワウ軍団に乗っ取られてしまったところもある。
  シラサギはカワウと同じように魚を食べるが、水中深くまで潜っていって魚を捕まえることはできない。カワウのように、水中で積極的に魚を追って捕まえるような野鳥が営巣地にやってくれば、やがてはその場所を譲らなければならないのだろう。
  こうして、数十年の歳月の流れのなかで、同じ魚を餌にしている鳥同士でありながら、野鳥も勢力の交代を余儀なくされていくのが面白い。それは、彼らの背景に私たち人間社会の生活が密接な関係をもって働いているという事実を知ることができるからだ。
  そう考えていくと、今日ではカワウの天下のように思われるが、いまさかんに私たちの回りで行われている「下水道工事」にも注目したい。これらの工事が完了した段階から、水環境は確実に変わっていくはずだ。そうすれば、この先30年ほどの間には、カワウの次に勢力を伸ばしてくる野鳥がいることだろう。
  ネイチャーフォトと称して、ただ美しい自然現象だけをつまみ食いしていたのではこういう自然の本当の姿は見えてこない。私たち人間の存在ですら、自然に保護されて生きているのだから、自然の背景にある社会をも見据えてはじめて写真のもつ「時代性」というものがあるような気がする。

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水面を泳ぐカワウ。 カワウの集団営巣。

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巣のなかで抱卵中のカワウ。
山梨県の甲府市で、集団で眠るカワウ。こんな内陸部にやってくるようになったのも、わずか5〜6年前。

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長野県天竜川のダム湖で翼を休めるカワウ。

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高知県高知市でビルを背景に眠るカワウ。
三河湾豊橋港の貯木場で翼を休めるカワウ。

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矢作川の上流部で翼を休めるカワウ。
カワウの休む真ん中にはアオサギもいた。どちらも、河川の富栄養化で増加中の野鳥だ。

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