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『オオタカ三兄弟』(その1)

ワシやタカなどの猛禽類で、日本の森林に棲む代表的なタカといえば、
オオタカ、ハイタカ、ツミの3兄弟だ。
なにかと環境保護の指標として、代表選手にあげられるオオタカだが、
現代の自然環境を語るのに、あまりに一カ所だけが
注目された保護論が先行しているようだ。
僕がこの3兄弟を長年観察してきて、感じていることを報告しよう。


■長男オオタカは増えている
  オオタカはカラス大。ハイタカは鳩とカラスの中間。ツミは鳩より若干小さいくらいなので、オオタカが長男、次男がハイタカ、三男がツミと言える。
  3兄弟は体の大きさの違いから、捕まえる獲物のサイズも分かれていて、野鳥を狩るという同じような食性をもちながら日本の風土でちゃんと棲み分けているのである。
  なかでも、オオタカは昔から「鷹狩り」のタカとして重宝されていたから、それぞれの時代の中でいつも注目の中心にあり、そして近年もいろんな意味で注目されている。
  そのオオタカは半世紀前はとても数が少なかったことから「絶滅が危惧されている貴重なタカ」といった保護論が先行しているような気がする。
  しかし今、オオタカは全国各地で増加傾向にある。それは、ここ20年くらいのオオカに関する新聞記事をみても、全国的に目立ちはじめていることが分かる。もちろん、ボクのお膝元である長野県でも、地域によっては2km置きに巣が見つかっている。これは、30年ほど前までは考えられないくらいに、増えてきているからだ。
  では、オオタカはなぜ増加しているのか。それは、ズバリいって今日の時代がオオタカ好みの「住と食」を提供しているからだ。

■巣づくりできる樹齢林
  オオタカが巣をつくりやすい木は、胸高直径が30〜70センチくらいの樹齢40〜70年の樹木である。このような木は、高さが20〜30メートルあり、そんな木の枝がしっかりしている中腹あたりのところに、オオタカは直径1メートル強の巣を架ける。
  第二次大戦のときに物資調達でことごとく伐採された跡地に、植林されて生えてきた木たちで、いまの日本の森林はできている。まさにその樹齢の樹木なのである。
  加えて、日本中のライフエネルギーが電気、ガス、石油にとって代わり、木材も東南アジア方面からの輸入材が急激に増えた。こうした背景で、薪炭生産としての里山が手入れされないまま放置された。このような里山は枝も自由にのびて、オオタカが巣をつくりやすい環境をどんどん整えていったのである。

■餌も豊富に
  オオタカはヤマドリやキジ、カモなどの大型の獲物から、キジバトやカケス、オナガなどの中型の野鳥まで狩ることができる。なかでも、キジバトやドバトくらいの大きさの獲物がもっとも狩りやすい。
  そしてその一番狩りやすい大きさの獲物、ドバトがここ30年ほどの間に全国的に増えた。
  高速道路は全国に延び国道や地方道なども整備され、橋脚や鉄橋などがドバトのマンションとなった。地方都市にも、ビルが建ち、大きな工場や倉庫などもできて、ここにもドバトが棲みはじめた。加えて、農業もコンバインなどが導入されて、稲刈りにしても落ち穂などを拾わないから、ドバトの餌も時代がたくさん提供するようになった。まさに高度経済成長時代の落とし子のような野鳥が、ドバトなのである。
  こうして増えてきたドバトをオオタカは餌として捕まえはじた。加えて、ハクチョウの餌付けに代表されるように自然保護思想のたかまりから、河川では全国的にカモなどが増えた。また、中国原産のコジュケイなども狩猟目的で山野にどんどん放鳥されつづけてきたから、オオタカはカモやコジュケイまでも獲物として狙ってきているのだ。

■オオタカはバブル期を迎えている?
  このように、オオタカは子育てのできるマンションとレストランを現代社会から提供された。生物は主食とする餌がたくさんあれば、それを食べて数を増やしていくのが常である。これが「自然界の経済学」であって、オオタカはまさに今日の人間社会の狭間でバブル期を迎えているといっていいのだ
  自然環境とは、例えば30年前のイメージを引きずって「絶滅危惧」とされ注目されているオオタカだけを見て判断するのではなく、彼らが自然界でどのような位置に生きているのかを読みとっていけばおのずと見えてくるものである。
  環境とはまさに「環」の「境」であり、巣、餌、木、・・・・などと、彼らが生きていくうえで必要な環をみて、境を探れば答えがでてくる。
  このように、オオタカだけを見れば今日の環境を実にうまく取り入れて繁栄していることがよくわかる。
  しかし、三兄弟を見渡した場合、次男のハイタカが激減をしている。オオタカの繁栄を尻目に、ハイタカはまさに絶滅が危惧されるほど凋落をつづけているからである。その原因を、次号で報告しよう。

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オオタカの雄姿 オオタカの卵。獲物が少ないと2卵のことが多いが、最近では4卵、5卵という巣もある。

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親鳥が足でつかんでいる獲物は、コジュケイ。
オオタカのヒナ。

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ドバトを捕らえたオオタカ。
田んぼで落ち穂を拾うドバトの群れ。(長野県松本市)

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オオタカに食べられたドバト。
林でオオタカに食べられたドバトの羽毛。

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こんな道路際でも、オオタカは子育てをした。道路ができたあとにわざわざココまできて営巣をはじめたのだから、新しい環境を巧みに取り入れていることがうかがえる。
林のなかのオオタカの巣。

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