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『カモメの新興住宅』

北海道知床半島にある、羅臼町。
根室海峡に面した漁業の町である。
目前には国後島が望め、とりあえずそこはロシア領だから、
そこはまさに国境の海なのである。
その国境の海辺で漁業の近代化を喜んでいる野鳥がいた。


■ハイテク漁業を喜ぶ野鳥
  根室海峡には、ロシア大陸から流れ込む巨大なアムール川からの雪解け水がオホーツク海を通 ってやってくる。この水がプラクトンの多大な生産を産むから、すなわち魚影が濃い。手つかずのまま残されている資源豊富な北方領土の海底にも魚群がひしめいている。このため、羅臼では年間を通 してたくさんの魚が水揚げされている。私たちに馴染みの深いタラコをお腹にもつスケトウダラの漁獲高では日本一だし、サケやマス、ソイやカレイ、カニ、イカなど、捕れない魚はないといわれるほどだ。
  今日の漁業はハイテク化がすすみ、魚群探知機を使って効率よく魚影をとらえ、しかも軽くて丈夫なナイロン製の網で捕ることで、漁獲確率も良くなった。そんな漁獲高を喜んでいるのは、人間だけでなく近所に棲む野鳥たちだ。
  とくにカモメの仲間は、網からこぼれた魚たちを拾うことに余念がない。また漁によっては、深海から大量に魚を獲ってくるから、商品価値のない得体の知れない「深海魚」などもたくさん混獲される。それらの魚はみんな放り投げられるから、カモメたちはふだんの生活ではそう簡単には捕れなかった獲物にまでありつけて、先を争って食べている。

■カモメにも経済学が・・
  オオセグロカモメは、北方領土から北海道にかけて生息する大型のカモメ。翼開長は1.6メートルにもなる。貪欲な食欲をもつ水辺のスカベンジャーだ。いわゆる、掃除屋さんなのである。
  カラスが陸のスカベンジャーなら、足に水かきをもつオオセグロカモメは水辺の担当である。
  自然界は、水辺からも膨大な量の死骸が発生することをあらかじめ予測していたから、カモメの仲間をクリーニング係りとして登場させてきたのだ。だからオオセグロカモメは、魚たちの死骸が大好きなのである。そして、近代漁業が行われるこうした「漁業の町」といった環境に、どんどん集まってくるのである。
  生物たちは餌のあるところに必然的に集まる習性がある。要するにそれは人間社会でいうところの「経済学」である。経済の集中するところに人が集まってくるように、オオセグロカモメは今や増加の一途をたどっているのである。

■カモメの新興住宅地
  オオセグロカモメは本来、海岸線の絶壁の岩棚などに巣をかけて子育てをする。ところが、数が増えてくると巣をつくれる場所が少なくなって、新天地を求めるしかない。そうしたカモメたちが、羅臼では民家の屋根などに営巣場所を選びはじめてきている。
  羅臼漁港にほど近い民家のトタン屋根には、こうしたオオセグロカモメの姿が最近になって目立つようになってきた。まさに、通勤圏内に新興住宅を築きはじめたのである。
  しかし、天然の岩場とちがってトタン屋根は太陽熱を吸収して暑い。カモメはそれなりの苦労をしているのかもしれないが、数が増えるにつれこの暑さもクリアーしていく体質をもった「新オオセグロカモメ」も誕生してきている。このようなカモメだけが、私たち人間と共にライフスタイルを変化させながら共存をはかろうとしているのだろう。これは彼らにとって不幸なのか、それとも進歩なのかはまだよくわからない。だが、私たち人間が社会の求めに応じて漁獲高をあげ流通を整備してきたことで、彼らの生活を確実に変えてきていることだけは確かといえる。

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スケトウダラが大量に水揚げされる羅臼港。

トラック待ちの商品が荷崩れを起こせば、カモメも大喜び。

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小さな漁船の船着き場には、廃棄魚も多いからいつもたむろしている。

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カレイを丸飲みするオオセグロカモメの若鳥。その食欲は、どん欲で意地汚さもみえる。

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深海魚はまずはじめに目がら食べられる。 肉はすべて食べられて骨だけになった魚。

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3羽の子育てができることは、食料確保が潤沢な経済力豊かなカモメ家族といえる。

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国後島を望む民家の屋根に巣を架けたオオセグロカモメの夫婦。

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衛星受信アンテナの下に、新興住宅をつくったオオセグロカモメ。 民家の屋根をどんどん占領すれば、やがて人間との摩擦が起きてくることだろう。。

使用カメラ ニコンD1
シグマ17-35ミリF2.8〜4
EDニッコール400ミリ F3.5


 

 

 

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