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「ダニの大移動を見た!!」

交通事故で死んだキツネをみつけた。
可哀想だが、人里に生きる野生動物の宿命かもしれない。
そのキツネを「自然葬」にて葬り、3日後にあることに気がついた。
なんと、すごい数のダニが、新しい主人を捜して大移動を始めたのだ。


交通事故に遭ったキツネ
  10月31日の夕方、長野県飯島町の国道153号線で、交通事故に遭ったキツネにであった。キツネは、道路を横断中に車と接触したらしく、即死状態だった。外傷は見あたらないものの、鼻血を出して断末魔のけいれんをしていた。そのようすからして、どうやら頭蓋骨に致命傷を負ったようだ。やがてキツネは、「柿」を食べていたのか、胃の内容物を吐瀉して絶命した。
  キツネは、今年の春に生まれた、まだ若い雄だった。道路下の藪から飛び出してきて、夕方の帰宅ラッシュで交通量の多い国道を強引に横断したのがいけなかった。これはまさに、キツネの経験不足からくる事故である。
  キツネの横断先には、通学路の階段があった。階段の両脇はコンクリートの擁壁と金網のフェンスが張り巡らしてあったから、このキツネは通学路の階段を「けもの道」に使っていたのだ。そのいつもの習性が、何らかの判断ミスで生命を取られたことになる。

自然な形で死体を葬る
  可哀想だが、人里に生きる野生動物としては、これも仕方のないことなのかもしれない。里に生きる条件として、車対策ができないものは淘汰の対象になるからである。
  死んだキツネをこのまま舗装道路の上に置いておくこともできないから、近くの藪の中へ運んだ。このような現場に普通の人間がいれば、キツネの死体は土に穴を掘って埋めるだろう。しかし、僕はこのような葬りかたを好まない。自然界には「死」を待っている生物もいるのだから、キツネの死体もそのような「自然葬」にまかせたい。自然界のそうした摂理を尊重したいからだ。

キツネの死体にダニが!
  3日後、キツネがどうなっているか覗いてみたら、死体はそのまま静かに横たわっていた。死臭がかすかに感じられ、すでにハエたちがやってきて産卵の準備もしていた。そして、よくよく死体をみつめたら、なんと「ダニ」がうじゃうじゃと、歩いているのが見えた。毛深いキツネの肌ちかくに潜り込んでいたダニが、冷たくなった主人の死を悟って、逃げだしにかかっていたのだった。ダニは死んでしまった主人に食らいつく意味がないから、さっさと見限ったのである。
  あるダニは、死んだキツネの毛先に登ってじっと静かに「手」をひろげていた。これは、キツネの死体にやってくる別の動物に、乗り移る準備らしい。そう思って観察すれば、キツネの眉毛にもヒゲにも、耳の毛の突端にも、ダニが手をひろげて待っているではないか。
  また、あるダニは死体脇にあった細い枯れ枝の突端で同じように、手をひろげていた。さらに、死体からどんどん離れて、勤勉に黙々と地上を歩いていくダニもいた。その数は、全体で100匹はくだらないようすだった。一頭のキツネに、こんなにもダニが食らいついているのかと思うとゾッとするが、これも自然界での「おきて」なのだから冷静に見ておきたい。

ダニの放つ強烈な臭い
  そういえば、僕はむかし、ダニをライターで焼き殺したことがある。僕が山から帰ってみると、服の上をダニが歩いていた。そこで、爪楊枝の先端に登らせて、次にどこへ歩いていけばいいのか悩んでいたダニに、いきなりライターの火を近づけてみたのだ。ダニは、みるみる黒こげて、炭化した。その途端に、僕は胸を締め付けられるような汚臭を感じて、吐き気をもよおしてその場から逃げ出してしまった。
  ダニが焼ける過程で、とてつもない「汚臭」が放たれたのである。このニオイは、ダニが生きているうちは私たち人間の鼻ではわからない。しかし、動物たちにはどうやらダニが生きていても、それがわかるらしい。
  あるとき、僕の飼っていた柴犬がダニをつけて山から帰ってきたことがあった。そこで、ダニをとってあげた。しかし、この犬は僕が何を取ったか確認をしないと気がすまない愛犬だったから、ダニを鼻先に近づけて見せた。すると、犬はダニを鼻で嗅いだ瞬間、鼻汁と口からは泡を吹いて、苦しみはじめたのである。
  このようすからして、カメムシが危険を感じると臭い「屁」をするみたいに、ダニも自分の身を守るために動物たちの嫌がるニオイを出すにちがいないと思った。そのニオイがまさに、あの焼けた瞬間の汚臭である。それと同類のニオイが、動物たちには生きているダニで感じているのだ。だから、自分の体にたくさんのダニが食らいついていても、自分では「取る」ことができないのである。

ダニに僕の血をご馳走
  僕はダニを一匹焼き殺し、こうした発見をひとつしたのだった。そこで、こんどはそのお礼の意味をこめて、一匹のダニに僕自身の血を吸わせてみたのだ。
  ダニは僕の腕の皮膚に自分の頭を食い込ませ、首だけで支えた状態で、血を吸い始めた。そして僕の腕に5泊6日していった。体長1ミリくらいのダニが、腹一杯の血を吸うと、大豆くらいになるのだからたまげてしまった。そしてすっかり腹一杯なると、口を放して僕の腕から離れていったのだ。

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若くて美しい雄のキツネが断末魔の苦しみをしていた。 キツネは、この道路を右側から走ってきて、左の階段を上るつもりだった。階段は通学路になっている。 体温のなくなったキツネには用がないから、ダニはさっさと脱出をはじめた。

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キツネの血を吸い始めて肥大化しはじめたダニも、早々と退散を決意した。 落ち葉の上を歩けば、1ミリくらいのダニでも肉眼でわかる。

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キツネの死体の毛先で、ダニは手をひろげながら次なる獲物をまっていた。

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地上の枯れた松の皮の上では、ダニもどこにいるのか分からない。 肩へ食らいついたダニ。 ダニは自分の頭を僕の体に食い込ませて、首だけで支えて血を吸い始めた。これでも2日め。ダニの体の大きさはほとんど変わらない。

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食らいついて3日め頃がいちばんかゆく感じる。そして、ダニはひんぱんに「血糞」を出す。 すっかり腹一杯なると、ダニは口を放してコロリとおりてくる。大豆くらいの体を自らの小さな足で支えながら、ゆっくり歩いていく。5泊6日目のダニだが、こんなご馳走はもうさせないつもり。

(使用カメラ)ニコンD1/ニコンF100
(使用レンズ)シグマEX17〜35ミリ f2.8〜4/シグマEX28〜70ミリ f2.8/ニッコール85ミリ f1.8
(ストロボ)
(フィルム)フジRDPIII

 

 

 

 

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