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僕の『釣り堀』

今年の夏は、暑かった。
林の中にある僕のアトリエも、日中はけっこう暑かった。
そこで、ちょっとだけゼイタクをした。
アトリエの横を流れている渓流脇に倒木を輪切りにしてイスをつくり、
板を渡して簡易テーブルをつくったのである。
で、あんまり暑いと、そこに座ってビールを飲みながら、渓流を眺めていた。
渓流には、アマゴが泳いでいる。
そのアマゴを見ているだけで、暑さはどこへやら。

アマゴたちの順位関係
  テーブル脇のちょっとした溜まりには、23センチくらいと20センチくらいのアマゴがいた。そして、10センチくらいの若者が3匹、さらに5〜8センチくらいのチビが数匹。
  23センチくらいのアマゴは、いつも溜まりの中心にいて、ゆらりゆらりと泳いでいた。20センチくらいのやつは、その少しうしろを50センチばかり離れて、泳いでいた。この溜まりでは、23センチが「ボス」で、20センチは「ナンバー2」。
  ボスは、餌がいちばんよく流れてくるところに陣取っているから、ゆらりゆらりとしているだけで、口のなかに自然と餌が入ってくるのである。しかし、10センチくらいのやつは若造だから、どこにいっても落ち着ける場所がない。溜まりの中を、あっちにちょろちょろ、こっちにちょろちょろと、泳いでいる。体力ばかりをつかって、そのわりにはいい餌にありつけないから、いつまでたっても大きくなれない。さらに、もっと小さいのは気の毒なくらいちょろちょろちょろとしていた。これが、アマゴたちの順位 関係なのだから、仕方がない。
  いい渓流にいい淵があると、そうした順位関係を保ちながら数十匹の魚影があるものだ。そして、そのなかの「ボス」が必ず釣られるから、ナンバー2はいい淵ほどボスに昇格するのが早い。早ければ、30分以内で「ボス」になる。
  そうして、ずらりとボス候補生が群泳しているところが、すなわちいい淵なのだ。
  そんな淵が一つあれば、渓流釣り師は移動しなくても毎日必ず同じ場所で大きな獲物を得ることができる。だから、僕はアマゴを食べたくなると、ここで1匹だけ釣りあげて頂戴している。
  しかし、今年の夏はまったく釣りをしなかった。
  見ているだけで、なぜか満足していた。

魚影の消えた淵
  観察していたそのアマゴたちが、8月のお盆に、何者かに釣られてしまった。ボスとナンバー2が、一緒にいなくなってしまったのである。溜まりの脇にある砂地には、釣り人の足跡がきっちりと残っていたから釣られたのは間違いない。
  ボスたちがいなくなって、僕は次なるアマゴたちがやってくるのをたのしみにしてた。しかし、その後その淵に魚影がぴたっとなくなってしまった。どうやら、水かさが少なくて次なるアマゴたちが遡上して来られなかったのだ。
  大雨でも降って川の水が増えない限り、アマゴたちは移動できないのである。好天続きは私たちのような陸の生きものには時にはありがたいが、水辺に暮らす生物には困りものなのである。今年はお盆前から9月8日までの一ヶ月余まったく雨が降らなかったのだが、川の水が少なくなるのと同時に、釣られたあとの魚影も回復しなかったのだ。

大雨を喜ぶアマゴ
  そして、9月8日から3日間、今度は大雨がやってきた。
  台風14号に刺激された秋雨前線が、大雨をもたらしたのだ。
  渓流は大変な勢いで、大水が流れた。僕らには驚くような水量だが、アマゴたちは水の中できっとに大喜びをしているにちがいない。激しく流れる水の「道」を利用して、どんどん、どんどんと、上流を目指しての魚影が踊ることだろう。そうしてやってきたアマゴたちは、もう秋だから、ここで産卵に入るにちがいない。

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渓流は、こんな環境。 立ち枯れた松の木が、冬の大雪で倒れていた。それを、チエンソーで輪切りにしただけのイス。蝉しぐれを伴奏に、魚影の観察。 この溜まりだけで、大小10匹ほどのアマゴがいる。

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溜まりからは、下流へ向けてさらなる流れが続く。 対岸からみた渓流。岸辺には「ヤマアジサイ」がひっそりと夏を彩る。 渓流の上には、丸太の橋を架けてある。この上を、テン、リス、ヒメネズミ、サル、が歩いていくのを見た。

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秋になると、アマゴが産卵していく。 9月8、9、10日と降り続いた雨で、増水した。上流の森が健康ならば、このくらいの大雨でも水は濁らないものだが・・・・・。 大雨でも今のところイスやテーブルが流されるほどに、水量も増えてこない。これが流されるようでは、上流で鉄砲水が起きた時だ。

これまでの写真は、すべてデジタルカメラにて撮影しました。
使用カメラ、ニコンD−1。 使用レンズ、シグマ17〜35ミリ、28〜70ミリ。

 


 

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