そのレンゲ畑で、ケリが翼を半開きにしてあたかも自分がケガをしているようにみせかける「疑傷」をしていた。
こんな行動をするということは、近所には必ずヒナがいるに違いない。そう思って探してみると、やはりいた。僕の握り拳より小さなヒナだったが、地面に伏せてじっとしていれば、見つからないと思っているらしい。ヒナのプライドを傷つけまいと、僕は騙されたふりをして一枚だけ写真を撮って退散した。
多分、ケリの親もヒナも、僕をまんまと騙したつもりでいるに違いない。僕の立ち去ったレンゲ畑で、僕を欺いたつもりの手柄話を親子でしているようすが手に取るように分かる。
レンゲ畑が増えていくのは、いろいろな生きものたちのドラマがはじまっていくからいいことだ。そういえば、僕の子どものころは、春、見渡す限りのレンゲ畑があった。レンゲの「蜂蜜」が 、庶民にも当たり前で飲めた時代だった。それが、レンゲ畑も減り、途中から高値の高級品になってしまった。
そして今、半世紀を経て復活 してきた。いいことだ。