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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ツキノワグマ・9』 (09月24日)

『ウオオーン ウオオーン ウオオーン ・・・』
 
ツキノワグマの咆哮を、聞いた。
すごい、声である。
夜の10時半ころ、だった。
まっ暗闇の林の中から断続的に、30分近くも吠えつづけていた。
距離にして、ボクから100メートルくらいの位置だ。
ボクに対しての威嚇なのだろうか、それとも他のクマに対する咆哮なのだろうか、その区別はつかなかった。
しかし、その声には迫力があった。腹の底から絞り出すような、重くて大きな声だった。
 
とにかく、このような声は初めて聞いた。
クマが、このような吠え声を出すことも、初めて知った。
クマの別の声はこれまでにも野外で聴いたことはあるが、とにかくこのような咆哮は初めてだった。
あまり断続的に啼くものだから、しばらく聞いていたあとに、録音することを思い立った。
そして、暗い車の中で手探りで機材を捜してセットし、さあ録音の準備となったところで啼き止んでしまった。
迫力のある咆哮を記録することは結局できなかったが、いい経験をした。
 
翌朝になって、クマが吠えていた位置を見回ってみた。
しかし、林にはなんの痕跡もなかった。
そのまま周囲を広く探索してみたが、咆哮につながるようなものは何も見つからなかった。
その探索過程で、一人の青年にであった。
青年は、クマが吠えていたところからちょうどボクの反対側に位置する小尾根を越えた場所にいた。遊歩道を150メートルほど進んだところにある「あずま屋」で、寝袋を被って寝ていたのである。
あずま屋の脇にはオフロードバイクが置いてあり、明らかに昨夜からそこに泊まっていたのだった。
 
g『あなた、昨夜からここにいた…の?』
青『はあー 寝てました…が』
g『昨夜、そこでクマが大きな声だして吠えていたけど、聞いた?』
青『っえ、それって、マジっすか?』
g『うん、30分ばかり大きな声で啼いていた…けど』
g『あなたは、何時ころからここに来た…の?』
青『8時ころ…から』
 
あれだけ大きな声が青年に聞こえていなかったのも不思議だが、今日の若者にはそういう声を聞き分けるだけの耳のチャンネルがないのかも知れない。
しかも、あずま屋は遊歩道の脇にあるから、その遊歩道はクマたちが通る「けもの道」にもなっているはずだ。
青年が寝ている脇を、クマが足音を消して通り過ぎていった可能性もある。
いや、クマはその遊歩道を通りたかったけれども、青年がいたから、吠えていたのかも知れない。

 
夜間のクマは、すぐ近所にいても見つけることは不可能に近い。




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