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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ツキノワグマ・8』 (09月19日)

ツキノワグマが歩くときは、ほんとうに小さな足音しか聞こえない。
大きな個体は体重が100キロ以上もあるのだから、出会ったことのない人たちにはさぞや足音も大きいだろうと、思われている。
しかし、彼らの手足はイノシシやカモシカのように蹄ではなくて、肉球だ。
その足で大きな音を出せというほうが、無理なことである。
 
そのツキノワグマが人間の存在を意識したときには、まったく足音を立てずに歩く。
枯れ葉を踏む音すらも消して歩くのだから、大したものだ。
それも、ボクから4メートルのところを歩いていっても、音がしない。
だから、暗闇の森でクマと対峙するときには、どこにいるのかこちらにはまったく予測がつかないものである。
 
そんなクマだから、自分でも足音を消さなければならないと思って慎重に行動しているのだろう。
その行動が、たぶん本人の「殺気」に通じているらしく、姿は見えなくても「いる」という気配だけはこちらにも伝わってくる。
だからボクも、さらに確かな確認をとりたいから、全神経を耳目に集中させてしまう。
すると、ボクからの「殺気」もでるから、クマにもそれがわかってしまうのだ。
 
こうして闇の森で、「殺気」と「殺気」がぶつかりあったまま、お互いの駆け引きがはじまる。
そういうときに限ってクマは自分を勇気づけるみたいに、いきなり直径3センチくらいの生木を折って威嚇をしてくるのである。
「バッキーン」っという、大きな音が静寂の暗闇から突然聞こえてくるからだ。
正直いって、この音には、思わず怯んでしまうところだ。
 
それでもボクが頑張ってさらに殺気を送りつづけると、こんどは『ブッフォー』っと、鼻とも口ともつかないところから息を吐き出してくる。その迫力はものすごく、鼻汁が4〜5メートルは飛んできそうだ。
このような威嚇を何回も受けたが、こちらが怯まずにいると、やがて向こうで折れるか立ち去っていくかのどちらかとなる。
 
クマの気持ちが折れてカメラの前に出てきてくれれば、その後の撮影はほんとうにラクになる。
こうした緊張感のなかでも、彼らはその場の学習だけはちゃんと怠らないようだ。

 
このツキノワグマは、まだかなり緊張している。カメラとの距離は7メートルだった。




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