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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ツキノワグマ・5』 (09月13日)

伊那谷の中央アルプス山麓にあるキャンプ場。周囲は林に囲まれ自然度も高いから、都会人にはなかなか人気があるみたいだ。このため、毎年4月下旬〜10月一杯までは、週末ともなれば予約が取れないほどに混み合っている。
主に、関東や中京、近畿方面からの利用者が多いが、ここにやってくるキャンパーはほぼ100パーセントが、夕食には「バーベキュー」を楽しんでいる。
キャンプ場内をさりげなく観察してみれば、家族連れがバーベキューコンロを囲んで、その脇で旦那はビールを飲み、カミさんや子供たちはジュースやウーロン茶を飲む姿がある。そして、コンロからは肉や野菜の焼ける煙がでて、スイカやメロン、ブドウ、トウモロコシ…などもデザートとして食べられている。
まるでそこには、アウトドア雑誌のグラビアから抜け出してきたみたいな風景が、事実として繰り広げられているのである。
 
このように、毎回日替わりでやってくるキャンパーたちがバーベキューを繰り返すものだから、周辺の山野にはそれはそれは美味しそうな匂いが漂っていく。雑食性のタヌキやツキノワグマにとっては、このバーベキュー臭は、ある意味では「拷問」」のような匂い…にもなる。
そこで、これらの残滓の味を覚えてしまった個体はいてもたってもいられず、残滓のあつまるところにやってきて、漁りはじめるからだ。
 
このキャンプ場はもともとツキノワグマの行動圏内でもあるから、クマも普通の行動として徘徊を続けている。そこに、こんな匂いがしてくれば、たまらない。
夜陰に乗じて、ゴミ集積場に集めてあった残滓に手を出してくるのだった。
蓋付きのポリバケツをひっくり返して、その中に納められているマーケットの袋に入れられた残滓を藪のなかに持ち込んで、そこでゆっくりと平らげるのである。
 
クマにとっては、黒こげになった焼き肉の残滓でもタレ味が効いているから、それはそれはめくるめくご馳走なのだ。
人間にとっては捨てたゴミ袋でも、クマには夢中になれるだけの魅力が詰まったご馳走袋なのである。
そして、藪の中にはクマが座り込んで食事をした広場ができあがり、ポリバケツとその広場まではピストンされた「けもの道」」がしっかりと出来上がっていく。さらに、現場にはクマも食べないプラスチック容器やビール缶などが散乱する。しかも、野太いクマのウンコまで目撃できるから、スイカやメロンの種、モロコシなどの皮が消化されずにそのまま残っているのも見られる。
そんな光景を見つけて、キャンプ場の管理人は蒼くなる。
お客に見つかったら大変なことになるといって、すぐに捕獲檻がしかけられて「射殺」ないしは「お仕置き放獣」となる、のである。
 
これは何も伊那谷のキャンプ場だけに限ったことではない。
全国の自然環境のいいところならばどのこキャンプ場にも、クマが出現してきていると考えてもいいだろう。
自然度の濃い環境でこのように営業目的で場所を提供するならば、やはりクマが入れないようにキャンプサイトを電気柵などで一周ぐるりと囲んで防備するのが本来の姿ではないだろうか。キャンプに訪れる都会人もそのような環境には、クマもスズメバチもマムシもセットになっているものだという認識のうえで、アウトドアライフを楽しんでもらいたい。
今日の日本人は、受け入れる側も、出かける側も、そういった自然に対する認識度がまったくゼロなのだから、まさに「貧困なる精神」としか言わざるをえない。

写真上・クマがゴミ袋を持ち込んで食べた跡。ビニール系統だけは食べずに放置。
 写真下・スイカの種やトウモロコシがみられるクマの12時間以内の糞。




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