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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ツキノワグマ・4』 (09月10日)

『gakuさん、gakuさん、昨夜どうもクマが庭へ出てきたぞぅー』
『ちょっと悪いけど、すぐに見てくれや〜』
 
今朝、いきなり電話で呼び出されたのは近所の喫茶店からだった。
ボクがイノシシの親子を撮影するためにカメラを設置してある庭に、どうやらクマがきたらしいのだ。
 
さっそく出かけてみて、驚いた。
確かに、クマが出てきた痕跡があったからである。
クマは、庭に生えていたテンナンショウ属の「オオマムシグサ」の球根を掘り起こして食べていった。
毒草と言われているマムシグサの球根を、クマが果たして食うのだろうかと疑問も感じたが、痕跡は明らかにクマの仕業だった。
イノシシだったらもっと豪快に掘るし、何よりも蹄の足跡が残る。
そのイノシシの足跡がないし、掘り起こした土はすべてに滑らかな丸みがある。
こうした滑らかさこそ、クマの特徴だからである。
 
そんなところへ、300メートルほど上部にあるホテルのオヤジがやってきた。
『昨夜、どうもクマが歩いていったぜ。ウチの犬のマックが吠えておったで、なぁ。』
『夜の11時ころ、だった。あんまり犬が啼くもんだから庭へ出てみたら、マックが舗装道路のニオイをさかんに嗅いでおった。クマはたぶん、道路を歩いていった…な。』
 
これまでの動きからして、我々はクマの出現コースをほぼ特定しているから、マックの行動も確かだろう。
クマは、林の中の「けもの道」を使いながら、ときには道路も使って人家付近にもやってきているからだ。
しかも、今回は人家の庭先だから家から20メートルほどしか離れていない。
そんなところで、オオマムシグサを掘って食べていっているのだから、クマも大胆なものだ。
足跡からして、体重が30〜40キロの小さなクマだろう。
 
こんなクマの出現に、ボクの仲間はみんな楽しんでいる。
部屋からクマが見られれば、楽しいとも、思っている。
だから、夕方までにはクマの通りそうなところには、行動をチェックするための「糸」がまんべんなく張られた。
地上30センチに張られた糸が、クマが歩けばその方向に向かって引っ張られて流れていく。その流れによって、行動がある程度見えるからである。
ボクがクマの痕跡を撮影しているあいだに、黙っていても仲間はせっせと蛍光糸をあっちこっちに張り巡らしているのだから、みんな優秀なアシスタントたちばかりだ。
自然をどう見ていくかといったボクの日頃の言動が、こういうときにちゃんと発揮されるのが、うれしい。

写真上・人家まで20メートルの距離で、クマはマムシグサの球根を掘っていった。
 写真下・食べたのは球根だけで、茎はそのままだった。




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