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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ツキノワグマ』 (09月01日)

最近、長野県内ではツキノワグマの話題が多いような気がする。
目撃例ばかりでなく、人間と格闘するニュースまである。
山野でいきなりクマと遭遇して取っ組み合いになり、巴投げをしたら逃げていったとか。
青年が夜間の遊歩道を散歩中に、クマに出会い腕を噛まれた…とか。
 
ボクの仕事場のまわりにも現在、クマが出現中である。
現在というより、昔からクマは普通にいるところなのである。その生息地の中に、ボクが入り込んで仕事をさせてもらっているにすぎない。
そんな環境だから、ボクも絶対に油断はできないと思いつつ日々の仕事をこなしている。
だからといって、クマがいなくなればいいとも思わない。クマは日本の山野に昔から棲んできた動物だから、できるなら無用なトラブルもなく共にそれぞれの生活を続けていければいい、と思っている。
 
このため、仕事場の周囲にはセンサーを張り巡らして、室内にいても屋外のようすがある程度分かるようにもしている。
夜間の外出などはとくに注意しなければならないから、家のまわりの防備には怠りがない。
というのも、外出しようとしていきなり玄関を開けたらそこにクマがいて「襲われた」、なんていう事例が数十年前に市内でも実際に起きているからだ。だから、そういうこともあるのだから、細心の注意と心構えだけはしているつもりだ。
 
こういう心構えをしながら今日まで仕事をしてきているのだから、必然的にクマのことだって自分なりに調べてもいるつもりだ。
だから、この「gaku日記」にも、過去たびたびクマのことを取り上げてきている。
そうした過去の話題を念頭におきながら現在のクマ事情を考察しているわけだが、ここ1〜2年は特にクマが人間に異常接近してきているような気がしてならない。
これは、確実に個体数が増えてきているのではないか、とも思える現象だ。
 
そして、そうしたクマが人家付近にやってくるから、目撃され次第に捕獲檻が仕掛けられ「捕まえ」られてしまうのだ。
そうしたクマを殺すのではなくて、「人家付近にやってくればひどい目に遭うぞ」ということを教えるために、トウガラシスプレーなどで「お仕置き」をしてから奥山へ再放獣をする方向に、世論も傾いている。
 
しかし、こうして再放獣されたクマが人間を逆襲している可能性も否定できない。
 
奥山といっても、数百キロもの奥行きのあるアラスカやカナダなどの山ならともかく、日本に「奥山」なんてないのではないか。
ましてや、長野県の山野を見渡しても「奥山」といわれるところは一つもないと、ボクは思っている。
クマの生息域はハイマツ地帯の高山帯ではなく、もともとは里に近い山野なのである。
そのような環境には、今日ではいたるところに林道ができあがり、私たちも気軽に車で出かけている。
捕獲したクマをお仕置きして再放獣したつもりでも、そこはもともとクマの行動域の中なのであって、クマはどこにも行き場がないのである。
そこに人間が入り込みニアミスをすれば、「お仕置き」を経験しているクマが逆襲しやすくなってきているのではないか。
 
子犬だって、知らない人にいじめられればそれを一生覚えている。
クマは犬よりはるかに賢い動物だから、「お仕置き」を逆ねたみするだけの能力は充分に持ち合わせていると、ボクは信じるからだ。

 
このクマの背後50メートルのところには別荘があった。クマの耳目には、車のエンジン音も夜のヘッドライトも届いていた。そんな環境に、このクマは夜8時ころになると、足音を忍ばせてやってきていた。




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