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●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『ウリ坊が行方不明』 (06月30日)

駒ヶ根高原に、めちゃくちゃ美味しい「りんごパイ」を売る店がある。
1個100円、めちゃ安で美味しいのだ。
とにかく、このパイを一度食べれば、その味のとりこになってしまう。
しかも、つくるオヤジが頑固なものだから、なかなか入手できないのも魅力の一つになっている。
あまりにも美味しいものだから、高慢ちきなミニコミ誌の記者が「宣伝してやるから…」なんて取材を申し込めば、即オミット。
『おれが一人でつくれる量は決まっているから、宣伝してくれなくてもいい。』
まったくもって、私欲のない頑固オヤジなのである。
 
そんなオヤジだから、ボクとも気が合う。
もう、かれこれ30年来の付き合いなのだ。
そのオヤジが、りんごパイをつくるときにでるリンゴの皮を庭先に出しておく。
その皮を目当てに、最近はイノシシの親子がやってくるようになった。
リンゴの皮は20〜30個ほどのものだが、厳密にいえば「産業廃棄物」。
しかし、オヤジは頑固だから、「リンゴの皮くらい自然に返せないようでどうする」といって、肥料にするべく庭に穴を掘って、そこに出し続けている。
 
イノシシは、5匹のウリ坊をつれた若い母親。
背中にシマウリのような縞模様のある可愛らしい赤んぼうを5匹も連れて、毎晩やってくる。
もう、かれこれ一月ほど前からやってくるようになっているそのイノシシ家族を、頑固オヤジは毎晩双眼鏡とモニターテレビで観察している。
それも、居間から50メートルほど離れた畑にやってくるイノシシ家族のために、自らセンサーを開発して設置しているのだ。
 
とにかく、イノシシがやってくれば、まず居間まで信号が届いてブザーが鳴るように仕掛してある。
そして、照明が点きワイヤレスカメラが作動して、居間のテレビで状況が見られるようにもなっているのだ。
だから、夜なべ仕事中でも、睡眠中でも、イノシシがやってきたことを知ることもできるし、映像も見ることができる。
 
この観察結果が、とにかく面白い。
5匹のウリ坊のうちの3匹が、やんちゃ坊主で母親のいうことをまったく聞かない。
母イノシシがリンゴの皮を食べている間にも、近所を走りまわっていて遊んでばかりいる。その姿は人間の個性的な子どもにもよく似ており、頑固オヤジはパイをつくっているより楽しいといって、観察し続けている。
 
その赤んぼうが4匹、ここ5日ばかりいないみたいなのだ。
母親は、1匹だけのウリ坊をつれて、それでも毎晩でてきている。
どうやら、若い母親は4匹の子どもをいっぺんに失ってしまったようだ。
コンクリートの三面張り水路に落ちてしまえば、子どもはあがることができずに死んでしまう。
可能性としてはいちばん考えられる事故だが、とにかく4匹のウリ坊が行方不明なのだ。
 
これまでの観察では、5匹中の1匹だけが母親にぴったりくっついて行動をしており、3匹は鉄砲玉。もう1匹も、だんだんと悪ふざけがすぎるようになって鉄砲玉の仲間入りをしつつあった。
若い母親は得てしてこのように、子どもを事故死させてしまうことがある。
婆さんイノシシがついていて、3世代家族だと、このような事故率は少ない。そんなイノシシたちを、ボクはこれまでにも観察してきている。
だから、今回も母親があまりにも若そうだったから、5匹のウリ坊が無事育つか心配していたところだった。

 
母親のそばを片時も離れずに行動する1匹だけのウリ坊。この子は多分このまま成長するだろうが、後ろ姿はどこか寂しそうだ。




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