←タイトル一覧
  に戻る
●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『子ギツネ』 (06月28日)

上信越国立公園の霧ヶ峰高原。
ここのビーナスライン脇に、子ギツネが死んでいた。
子ギツネは、車にはねられて死んだものだった。
その体の大きさからして、生後4ヶ月弱の生命だった。
 
この世に生をうけてわずかな時間で死んでしまった子ギツネだが、その死に顔はとても幸せそうだった。
尾を弓のように上げ、前足はまるでトロットでも踏んでいるように踊っていた。そして、口を半開きにしながら、黒いその眼も笑っていた。
たぶん、こんな顔で、霧ヶ峰高原の風や音や光を全身で感じていたのだろう。
そんな楽しかった思い出をそのまま天国へもっていったような子ギツネの表情だった。
この子ギツネには兄弟もいて、生前はとっても幸せだったにちがいない。
 
その子ギツネの死体を見つけてボクは撮影しようと思ったけれど、目的があったので仕事を片づけてからゆっくり仕切り直しをすることにした。
気温も20度くらいだし、風もけっこう冷たかった。
だから、この表情はそのまま続いているものと、思っていたのである。
 
そして、3時間後。
現場に再訪してびっくりした。
子ギツネの表情が一変していたからだ。
つぶらな瞳を撮影すべく近づいてみたら、あの黒目がないのである。
眼にはウジがしっかりとたかっていて、白く見えるではないか。
しかも、その白さはウジのお尻が束になって集まっている状態だった。まるで肛門を伸縮するように、眼いっぱいにウジたちの尻が脈打っていたのである。
 
わずか3時間で、ウジがこんなにも成長しているのかという生命力にも驚愕した。
と、同時に、眼だけではなく脇腹にも10センチくらいの陥没口があり、その底にもおびただしい量のウジがうごめいていた。
死臭もすごいものがあったが、それでもこの子ギツネはまだ笑っているようだった。
短い生命で逝ってしまった子ギツネだが、こういうときの魂はいったいどこにあるのだろうか。
そして、こうした野生動物の死はこれまで冷静に目撃できると思ってきたが、この子ギツネだけは生かしておいてあげたかったと、ボクはつくづく思った。

写真上・交通事故現場。写真下・眼球を食い尽くすウジたち。




Copyright (C) 2003 OWLET.net(Manabu Miyazaki)