←タイトル一覧
  に戻る
●Gaku塾に連載の「gaku日記」の過去ログを掲載しています。


『走古丹』 (02月02日)

一瞬、目を疑った。
大群のエゾシカが隊列をくんで、凍結した沼の上を歩いてくるではないか。
その数は、800〜1000頭。
ぞろぞろぞろと、とにかくすごい数のエゾシカだった。
 
現在の日本で、こんな光景が見られるとは思わなかった。
ツンドラ地帯のトナカイならともかく、ここは北海道だ。
 
エゾシカは20年ほど前までは、厳重な保護政策がとられていた。
そして、こんどは増えすぎて、一転して狩猟圧にさらされた。
これまでは雄だけが狩猟の対象にされてきたが、雌も射殺してよくなった。
だから、ハンターが全国から集結して、エゾシカを追った。
効果はてきめんだった。
ここ2〜3年で、エゾシカは激減した。
 
エゾシカも狙われていることを悟り、すごく警戒心が強くなった。
以前なら道路際で平気で見られたのに、今日では雪の上に足跡すらもみえなくなってしまった。
そして、禁猟区などの「保護地」に逃げ込むようになった。
そんな場所では、以前と変わらず、のんびりとしたエゾシカを見ることができる。
 
そこが、「走古丹=はしりこたん」である。
走古丹とは、とてもいい地名だ。
北海道で、ボクがいちばん好きな地名である。
アイヌ語で「こたん」とは「集落」のことを意味する。
たぶん昔はここにアイヌ民族の「村」があったのだろう。
現在でも集落はできているが、明るくて広々としていて、いい場所だ。
そこにエゾシカが大群で逃げ込んでいるというのも、なにか因縁めいたものを感じる。
 
氷上以外の林にも数千頭のエゾシカがいたから、ここの禁猟区には相当な数が潜んでいるものと思われる。
このため、道路での交通事故もよく起きており、集落に暮らす人々にはエゾシカが迷惑な存在になっていることも確かだ。
とりあえず、今日では保護区になっているが、そのうちにここも保護区「解除」ということもなきにしもあらずだろう。
そうすれば、このような光景は見られなくなってしまう。

 
写真・このように隊列が延々と続いていた。背景には電柱や番屋が写り込んでいるが、時代を語るにはこういう写真でいいのだ。




Copyright (C) 2003 OWLET.net(Manabu Miyazaki)