昨日の吹雪は、すごかった。
とにかく、前が見えないほどの本格的な雪。
たった2時間ほどで、15cmの新雪があった。
それも、気温が低かったから、さらさらのパウダースノー。
ようやく、本格的な冬がきたカンジだ。
正月前後に続いたあの晴天が、ボクにはあまりにも気持ち悪かった。
この晴天のせいか、野鳥たちも山に引きこもっていた可能性がある。
もし、そうだとすれば、この雪でこれからは里にでてくるかもしれない。
雪との按配で、3月までのこれからを期待して注意深く見守りたいと思う。
降雪だからといって、休んでいるわけにはいかない。
こんなチャンスは、本づくりのためにもいろんな雪化粧を撮影しておかなければならない。
新雪のなかを元気に餌さがしをしていたのか、カモシカの足跡があった。
姿がないかと周囲を探したけれど、どこかに伏せられてしまっていた。
地上10cmのカマキリ卵と雪の関係は気になっているので、調べにいった。
ここは、積雪が少なくまだ10cmにも達してなかった。
ソヨゴの実なりは、例年になく豊作。
雪がないころは、サルもヒヨドリもツグミも食べていたけれど、まだ食べ切れてない状態だった。
ヌルデの実は、まだまったく手付かず。
ハンノキはこんなに寒くても、すでに芽吹きの準備をしている。
写真:
1)ハクチョウの家族が目の前を一瞬飛び過ぎていった。
吹雪でも平気なようすは、さすがに北国育ち。

昨年(2011年)の暮れに、九州の祖母山周辺を歩いてきた。
秋に、ツキノワグマが目撃されたらしいというニュースがあったから、自分の目で環境だけでも見てみたかったからだ。
こうして、オイラがわざわざ九州まで出かけるのも、目撃情報を100パーセント信じれなかったこともあるが、もしかしたらツキノワグマが生息しているのではないかといった半信半疑の気持ちを確かめるためでもあった。
オイラは祖母山そのものを知らないし、とにかく、現場環境を自分なりに見ることで気持ちをすっきりさせたかった。
ちょうど、九州に講演があったものだから、ならばこの機会に現地を訪れてしまおうと考えたのである。
いや、祖母山は想像以上に険しい山だった。
裾野は広く、急峻なのである。
山のカンジは、長野県でいえば「伊那山脈」にそっくりだった。
伊那山脈は、長野県の伊那から静岡県の浜松方面まで、中央構造線沿いに南北100kmほどある。最高峰は2000m余だけど、広く険しく、ツキノワグマをはじめとする野生動物の宝庫でもある。
祖母山は、そんな山容にそっくりだったのである。
なので、山容だけをみれば、ツキノワグマがそこかしこにいるのではないかと錯覚してしまいそうだった。
しかし、祖母山がこれだけいい山でも、ツキノワグマの生息はオイラにとっても五分五分といえた。
もちろん、オイラが現地に暮らしていれば、これまでの経験から2年もあればツキノワグマの答えは出せると思った。
オイラなら、まず稜線の登山道に無人撮影ロボットカメラを設置して、最低でも2年間は毎日稼動させるであろう。
そして、谷や腹にも同じく無人撮影ロボットカメラを設置して、あとは「クマクール」も何カ所かに展開すれば、そこにツキノワグマが生息していれば確実に尻尾がつかめると考えた。
しかし、オイラが身銭をきって九州まで出かけていって、ツキノワグマの存在を確認する意味合いというものはみあたらない。
10月に目撃情報がニュースになったときは全国的にかなりの関心が高まったのだから、もし、ツキノワグマの撮影に成功すればビックニュースとなって撮影者は一躍「時の人」になるにちがいない。
ここは、ぜひ、地元九州に住んでいるプロカメラマンがぜひやらなければならないことだろう。
九州で動物カメラマンを自称している「プロ」は何人かいるのだから、まさに面目躍如である。
ここは、ぜひ地元の人たちに頑張ってもらいたい、と思った。

このような道路と山のカンジは、伊那山脈にそっくりの地形だった。

クマ情報を求める看板がいたるところにあったが、「待ち」の姿勢ではちっとも前へは進まないと思う。

中腹の杉林の下ばえ環境も、ツキノワグマ生息環境にはぴったりだった。

このような渓流沿いにも、足跡などの痕跡があるのかもしれない。

傾山までの林道も、どこにクマがいてもおかしくない環境だった。
(Photo:新雪を踏んで深夜静かに現れたテン)
冬になると山の「テン」は、毛皮がふかふかになり全身が美しい黄色になります。
しなやかに動く姿態はスリムで、表情も可愛らしく、動きは敏捷です。
それでいて、なかなか出会うことのできない動物なので、あこがれてしまいます。
そんなテンを厳冬の満月の夜に撮影しようと待ってみました。
中央アルプスの標高1600mほどにある森のはずれの林道に車を停めて、そのなかから静かに待ってみたのです。
昼間、雪の上にテンの足跡を見つけてあったので、ひょっとしたら夜間に現れるのではないかと思いました。
夜間なので、ライトを照らすこともできないから、月明かりを利用してみようと思ったのです。
(Photo:満月のアルプスの夜)
ちょうど、満月でした。
月の明かりに目が慣れると、夜間なのにびっくりするくらい明るいことに驚きました。
しかし、めちゃくちゃに寒いです。
車のなかといえども、エンジンをかけられないのでジンジンと冷えてきます。
車内のガラスはボクの息であっというまに曇っていき、外を見ることもできません。
このため、窓ガラスを10センチくらい開けて、とにかく息を殺しながら寝袋にくるまって雪の斜面に目をこらしました。
(Photo:満月を見ていると厳かな気分になってしまう)
満月の雪面をじっと見ていると、景色はいつも同じようにみえます。
これならテンを見つけるのも楽勝だと、最初は思いました。
しかしじっと月明かりの森を見ていると、ときどき幻影となって、台地のへこみや落ち葉までもが動物のように見えてなりません。
そのたびに、双眼鏡で確認するのですが、錯覚だったことを思い知らされがっかりするのでした。
そんなボクの視界に、やっと、何かが動く気配を感じました。
物音をだしてもいけないので、双眼鏡は使えません。
しかし、満月の明かりといっても、そこはやはり夜なので昼間のようなわけにはいきません。
もどかしい気持ちのまま、雪原に影が動いたようでしたので一応カメラのシャッターを切ってみました。
ストロボが一瞬に閃光して、あたりが真っ白になっただけで動物らしきものは視界には入りませんでした。
それでもと思い、デジタルカメラのモニターを起こしてみたら、そこには真黄色の美しいテンの姿があるではありませんか。
やっぱり、テンは来ていたのです。
(Photo:冬毛のテンは「キテン」ともよばれる)
この一発の閃光でテンはすっとんで逃げてしまいましたが、満月なのにどうしてテンの姿が見えなかったのだろうと不思議に思いました。
しばらく考えていると、月の光と黄色いテンの体色は同系色なので、真白い雪の上ではひょっとしたら保護色になっていて人間の目には見えなかったのではないか、と思いました。
テンは猫くらいなのだから10メートルほどの距離で見えないハズはないのですが、やはりそこは見えなかったのです。
まさに、月のマジックでした。
月光下ではステルス行動がとれるように動物たちの毛皮が光を吸収してしまうのではないか、と思いました。
テンだけでなく、タヌキやキツネまでもが月の魔術のもとでは姿が見えなくなってしまうのです。
このためボクは、それからというもの月光下では動物の姿そのものではなく、「影」を追えばいいことに気づきました。
これも体験しなければ分からないのですが、森の妖精にはこうすれば会えることを覚えました。
テンは、これまで出会うのも撮影するのも極めて難しいと思っていた動物だけに、いちどそのポイントをつかんでしまうとあとは連立方程式を解くようにカンタンにコトが進むものです。
足跡や糞などもすぐにわかるようになりますから、テンの行動を知ることもできます。
ボクはこうして、「森の妖精」のテンをとうとう自分のものにしてしまったのです。
(Photo:テンの足跡)
(Photo:冬の森で倒木の上を渡テン。まさに妖精のようにしなやかな肢体が美しい)
(Photo:テンの糞。ヤマブドウの実です)
(Photo:中央アルプス。月光浴の夜)
(Photo:雪穴から顔を出してきたテン)